私は美術館や博物館の展覧会に美術鑑賞に行くのが好きなのだが、その際必ず持って行くものがある。
それは単眼鏡だ。
聞き馴染みが無い人が多いかもしれないが、簡単に言うと小型の望遠鏡といえるもので、少し離れた所に展示されている美術館や博物館の展示物を拡大して鑑賞することができるものだ。
当然視野は両眼の双眼鏡には及ばないが、小型・軽量にすることができるという利点があるため、室内や旅行、まち歩きなど狭い場所や身軽に移動したい場合には双眼鏡よりも単眼鏡が最適だ。
そんな単眼鏡の中で、私が現在愛用しているのは「ビクセン マルチモノキュラー4×12」
実際にこの製品を購入する際に考慮したことや、比較した競合製品について紹介したい。
単眼鏡は数メートル先のものを数倍にしてみることができるため、ただ眼で見るよりも絵画の細かい筆使いや工芸品の細かい細工などを正確に鑑賞することができる。
個人的には、今まで単眼鏡を使っていなかったことを後悔した程で、今まで観たことがある絵画や工芸品を再度観て観たくなった。
それほど単眼鏡は美術鑑賞の楽しみ度をアップしてくれる。
また数年前から刀剣女子と言う刀剣好きの女性が増えているそうで、そんな彼女らの間にも単眼鏡は売れているようである。
それは、武器でありながら美術品のように美しい刀剣の刃紋や柄、鞘などを「細部まで拡大して見てみたい」という要求に答えることができるからだろう。
また明治時代の超絶技巧工芸品も最近ブームである。超絶技巧工芸品とは現代の職人の技術では作ることができないほど細かく精緻に作られた品で、拡大して観ることで、さらにその凄さがわかる。
単眼鏡は、この要求にも答えることができるため、手にする人が増えるのは納得である。
単眼鏡に付いているレンズは明るさが重要。
野外であれば太陽という素晴らしい照明があるため特にレンズが明るい必要はないのだが、室内の展覧会などの場合、展示品を保護するため比較的暗い室内状態のことが多い。
その為、レンズは明るければ明るいほど良い。
ただし、レンズは明るいものほど高価でサイズも大きくなるため、自分の懐具合に合わせ選ぶ必要がある。
単眼鏡には色々な製品があり、明るさの違いだけでなく、その倍率にも違いがある。
当然「倍率が高いものが良いのだろう」と思う人がいると思うのだが、倍率が高いと手ブレの影響をその倍率に比例して受けやすくなるし、今単眼鏡で見ている箇所が、絵などの対象物全体のどこの箇所を見ているのかわからなくなるため、美術鑑賞用としてはおすすめできない。
個人的には手ブレとの兼ね合いから4〜6倍辺りが最適と思う。
単眼鏡には最短合焦距離というものがある。
これは簡単に言うと「ピントが合う最短の距離」のことだ。
例えば、最短合焦距離が20cmならば、対象物から単眼鏡までの距離が最低20cm離れてはじめてピントが合うということである。
つまり、
20cm未満だとピントは合わない。
20cm以上だとピントは合う。
では、この最短合焦距離はどういう時に重要だろうか。
美術品などの展示は大きく分けると次の画像のように壁掛けと平置きがある。
いずれも、大体保護ガラス越しに鑑賞することになるが、壁掛けの場合保護ガラスから作品までの距離が長い。逆に平置きの場合は短い。
ここで最短合焦距離が問題になるのは平置きの方だ。
平置きは工芸品などの立体的なモノの展示に使われることが多い。
たとえば、非常に細かい細工がある工芸品を鑑賞する場合を想定してみよう。
対象物の細部を拡大して鑑賞したいが最短合焦距離が長いものは保護ガラスギリギリまで寄ることはできない。
逆に最短合焦距離が短いものはギリギリまで寄ることができる。
また、壁掛けの絵画などを保護ガラス越しに鑑賞すると想定すると、そもそも対象物までの距離が遠いため、この最短合焦距離が問題になることは少ない。
なので、最短合焦距離は短いほうが美術鑑賞には最適だ。
単眼鏡は眼で接眼レンズ部分を覗き込むのだが、メガネを使用している場合アイレリーフの長さが重要になる。
アイレリーフとは、単眼鏡を覗いた時に、視野全体を見ることができる眼の位置から接眼レンズまでの距離を言う。
画像のように裸眼時であれば特に問題はない。
ただし、メガネを掛けている場合は、次の画像のようにメガネ分接眼レンズに眼を近づけることはできないため、アイレリーフが長いものでなければ視野が一部欠けてしまう。
上記を考慮したスペックを具体的に言うと「アイレリーフ15mm以上ハイアイポイント設計」がなされている製品である必要があるのだが、この記事で紹介する製品に関しては、これが考慮された作りになっているので安心してほしい。
私がビクセン マルチモノキュラー4×12を購入した際に、次の3製品を比較した。
実はNikon モノキュラー HG5X15も相方用に購入しており、 実際に購入した2製品については、より詳細な画像を含めてスペックと所感について比較・記述したいと思う。
まずは、わかりやすく各製品の情報を比較表にしてみた。
【注意】価格はAmazon 2020年7月8日時点の実売価格
製品名 | 明度 | 倍率 | 価格(円) | 最短合焦距離 | 評価 |
---|---|---|---|---|---|
ビクセン マルチモノキュラー4×12 | ○ | 4倍 | 6,210 | 20cm | 性能良で安価 |
Nikon モノキュラー HG5X15D | ○ | 5倍 | 17,282 | 60cm | 性能高だが少し高価 |
Carl Zeiss Mono 6x18T* | ◎ | 6倍 | 38,800 | 30cm | 性能最高だが高価 |
次に各製品の細かい仕様について画像を含めて説明していく。
公式サイトより製品概要を引用
美術鑑賞や講演会には必携の小型軽量マルチモノキュラー
メガネをかけたままでも大丈夫なハイアイポイント設計。しかも約20cmの近距離から焦点が合わせられ、9.0の明るさを実現しています。
レンズ性能は他の2製品より劣るが価格差ほどの差はなく、最短合焦距離も3つの中で最短の20cmなのでコストパフォーマンスが高い。
ピント合わせは回転式。
レンズ保護キャップは付いているが、若干取れやすいので注意が必要だ。
付属のストラップは首に掛けれる長さで使いやすい。
※首掛け状態の画像は、広角レンズで撮影したため、製品が実際より大きく写っている。大きさは100円硬貨との比較を参考にしてほしい。
公式サイトより製品概要を引用
ポケットにおさまる手のひらサイズ。気軽にどこへでも持ち歩け、使いたい時にサッと取り出せるので大変便利です。旅行、タウンウォッチング、そしてゴルフに。活躍のフィールドはあなたしだい。個性的なデザインと確かな性能でサポートします。
- 美術館・博物館での鑑賞に最適な、最短合焦距離0.6m。
- 高い光学性能により、明るくクリアな視界を実現。
- 外観に金属素材を使用した高級感のあるデザイン。
レンズ性能と質感、価格のバランスが良い。日本メーカーのNikon製で安心感もある。
ピント合わせは回転式。
レンズ保護キャンプは後側には付いているが、前側には付いていないため、レンズが傷つかないか気をつける必要がある。その分、付属の革製ソフトカバーに入れておけばしっかり保護してくれるのだが面倒くさい。
付属のストラップは短く手首用で、首に掛けれないのは不満だ。
公式サイトより製品概要を引用
スポーツイベントや劇場、さらに大自然の中で、Monoは、ジャケットのポケットやハンドバッグへの収納にぴったりで、何にでも使える名品です。モデルに応じて、ルーペ単眼鏡として使用したり、双眼鏡の倍率を増幅したいときでもご利用いただけます。お手持ちの双眼鏡の倍率を3倍高め、スポッティングスコープとして使用することもできます。最も微細なディテールを見分けることができます。観察できない物はありません。アシ原のトンボや遠方の鳥を観察するときなどに、Monoはしばしば過小評価されていますが、自然観察を効果的に手助けします。
レンズ性能は申し分ないが高価なのが懐に痛い。
ピント合わせは前後伸縮式。
店舗で実際の製品を手にしたが、片手でも操作できるため個人的には回転式よりも好きだ。
まあ、でも高い、、高すぎる。確かに性能は良いけど。。
以上より、美術鑑賞用の単眼鏡は倍率・レンズの明るさ・最短合焦距離・価格から総合的に判断すると「ビクセン マルチモノキュラー4×12」がおすすめだ。
実際に数年使用しているが、性能も他の2製品と価格ほどの差は感じられず、非常にコストパフォーマンスが高く満足している。
単眼鏡は一つあるだけで美術館や博物館をより楽しむことができる。美術館や博物館に行くのが三度の飯より好きな人ほど持っておいて損はないと思う。
単眼鏡を手に入れたら今まで観てきた作品を、もう一度観てみたくなりますよ〜。
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